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中国での法輪功弾圧の傾向と分析

2020年1月1日−2022年3月1日

概説

ニューヨーク在住の建築士が中国の親戚から電話で、68歳の母親が内モンゴルで拘束中に殺害されたと伝えられた。2008年の北京五輪前に夫が殺害されたアーティストは、COVID-19に関する情報をシェアしたために8年間の刑期を言い渡された。遼寧省では、ソーシャルメディアWeChatで友人にメッセージを送ったために、29歳のダンス教師が警察に拉致された。

これらの事例に共通することは、中国国内での凄惨な虐待の犠牲者・被害者ということだけでなく、法輪功を修めていたということだ。 2022年5月13日は、法輪功が伝え出されてから30年にあたる。仏家の修煉法に基づく法輪功は、現在、世界で数千万人に愛好されている。当初、中国で急速に広がった人気は、1999年7月に打ち切られた。中国共産党(中共)が、法輪功を撲滅するために、大掛かりで暴力的な法輪功弾圧運動を開始したためだ。23年経過した今も、中国全域で、法輪功を修める人々は、基本的人権である信仰の自由、表現の自由、法の適正な手続きが深刻に侵害されている現状に直面している。

この報告書では中共の法輪功弾圧運動に関する最新情報と過去2年間の傾向を精査した。中国で数百万人にのぼる法輪功修煉者は、自分が法輪功を修めていると認めたことだけで、恣意的に拘束され、拷問を受け、拘束中に死に至っている。その多くは、法輪功や迫害についての情報や、中共による中国人への虐待の広域な歴史を伝えただけで、最長の刑期と最も過酷な扱いを受けている。拘束された法輪功修煉者は、電気棒でのショックや性的虐待など、異様な拷問を受けている。また、法輪功を修めていることを理由に捉えられている囚人が、中国の拡張する移植産業の臓器源として殺害されてきたことを示す証拠が大量に存在する。

ここ2年間で際立った傾向として以下の三つが挙げられる。

  • 逮捕と嫌がらせの強化:中国当局による法輪功迫害は、COVID-19の流行期間中に劇的に増加。法輪功コミュニティが中国全土で中共の犯罪や虐待を最も多く内部告発していることが主な理由。2022年の北京冬季五輪や、香港での国家安全法の施行なども、迫害をエスカレートさせる一因となった。調査期間中、中国では3万4千人以上の法輪功修煉者が逮捕され、嫌がらせを受け、死に至る場合もあることが判明した。未報告の事例や2022年3月1日以降の報告は、この数字には含まれていない。
  • 逮捕を容易にする監視体制:法輪功修煉者は、現在でも中国の治安当局にとって、重要な監視対象。公共の場での顔認識ビデオカメラなどの監視技術の進歩、WeChatのように厳格に監視されているアプリの普及により、法輪功修煉者の追跡、特定、拘束を容易にしている。公園で法輪功について話したり、隣人宅にチラシを配ったり、法輪功に関する情報や法輪功修煉者が受けた権利侵害についてのリンクを共有するといった簡単な行為を理由に、逮捕され、長い懲役刑が言い渡されている。
  • 国境を越えた弾圧:迫害が始まって以来、中国国外でも法輪功学習者は監視、嫌がらせ、強盗、殴打などの対象にされてきた。この2年間、ニューヨークでの襲撃、中国領事館の圧力によるオーストラリアの地域イベントでの法輪功参加の妨害などが続いている。他国の政府が中国共産党の言いなりになることもある。例えばロシアでは、言論の自由の抑圧に用いられる過激派を取り締まる法律に基づいて、地元の法輪功グループを解散させる判決が出された。

中国内外の法輪功修煉者は、中共の弾圧運動に勇気と創造力をもって抵抗し、中共の強固な検閲機構を突破している。中国の法輪功修煉者は、公共の交通機関でBlueToothを使って、法輪功の関連情報を移動中の仲間と共有する。法輪功修煉者はCOVID-19の流行状況について最も積極的に情報を共有する中国市民に挙げられる。武漢の方斌のビデオは国際的に知られる。中国国外では、世界一流の舞踊公演、絵画展、受賞に輝く映画などの芸術が、修煉者たちの信念を伝え、迫害の実態を国際的に明らかにする重要な手段となっている。これらの活動は、中国の一般市民や著名な人権弁護士、外国の高官、映画ファンなどから支持・評価されている。

この2年間、中国政府は、米国と西側諸国の超党派政治を利用して、法輪功コミュニティが一部の政治勢力と結びついているように見せかけようとした。法輪功修煉者は、主に中国からの移民一世であるが、世界70カ国以上の政治・民族の違いを超えた人々も数多い。しかし、一部の米国メディアが法輪功コミュニティが「オルタナ右翼」、白人至上主義、または同様の政治団体と繋がっていると報道し、遺憾ながら信じられている事例もある。このような誤解は、欧米の一部の政府関係者の間に法輪功への不信感を醸成し、中共の片棒を担ぐような効果がある。

中共指導部は法輪功の撲滅に変わることなく力を注いでいる。7月20日の法輪功迫害開始の日や、2022年秋に開催される第20回の党大会など、敏感な日の前後には、中国各地で法輪功修煉者に対する嫌がらせや拘束が誘発されることは間違いない。今も続くパンデミックは、中国の「ゼロCOVID」政策や大規模なロックダウンなどの難題を抱えており、法輪功修煉者を対象とする迫害をエスカレートさせる可能性がある。法輪功修煉者は、特に中国国外に対して、非公式な情報を発信するからだ。

中共による中国内外の法輪功修煉者に対する迫害が今後も続く中で、国際的な立場にいる者は手をこまねくべきではない。臓器移植を妨害する立法、加害者への制裁、海外の法輪功コミュニティを中国の工作員から保護するなどの措置が緊急に求められている。こうすることで、弾圧が抑制され、下級役人の迫害参加が抑止され、最終的に命が救われる。法輪功修煉者は、自己の選んだ修養の道を進み、「真・善・忍」の信条に従って生活し、より自由で公正な中国を実現するために犠牲を払っている。世界は、中共ではなく法輪功を選択する時期にある。


報告書の主要項目を取り上げたウェビナー

このウェビナーでは、専著名な門家や証言者をパネラーとして招き、人権危機の最新情報、中国の国境を越えた広がり、残虐行為を終わらせ、より自由で公正な中国を確保するために米国やその他の政府ができることを討議しています。(収録動画:英語 1時間9分43秒)

モデレーター:

サーラ・クック: フリーダム・ハウス 中国・香港・台湾担当リサーチ・ディレクター

パネリスト:

  • ニーナ・シア:ハドソン研究所 宗教の自由センター ディレクター
  • リーヴァイ・ブラウデ:法輪大法情報センター 常任理事
  • サイモン・ジャン中国で拷問死した女性の息子
  • シンシア・スン法輪大法情報センター リサーチャー