脱党運動

チャイナタウンの通りや法輪功のパレードで、「X百万人が中国共産党を脱党した」というメッセージを見かけたことのある方もいらっしゃると思います。どういう意味なのでしょうか? 法輪功とどんな関係があるのでしょうか? なぜ広く報じられていないのでしょうか?

脱党運動とは?

これは中国で台頭する非暴力の「脱党運動」のメッセージです。中国人が中国共産党(中共)やその関連組織(未成年者が就学時に入団する中国共産主義青年団や少年先鋒隊など)との関係を断ち切ると公言することを促す運動です。公言者の身元を保護するために、通常、偽名が使われています。中共との関係を断ち切りたい理由もよく添えられています。大陸の中国人のほとんどは、少なくともこれらの組織のひとつに、現在所属するか過去に所属していました。これらの組織との関わりを断つ「脱党」とは、中国共産党や関連団体への非難を意味します。

脱党運動の始まり

脱党運動は、2004年末に海外の中国語新聞で『大紀元』(エポックタイムズ)の社説シリーズ『共産党についての九つの論評』(九評)の掲載を受けて始まりました。中共の歴史を詳細に記述し、人権侵害の記録や文化大革命、大躍進、天安門事件、法輪功への弾圧などに焦点を当てています。単なる史実にとどまらず、中国共産党そのものが本質的に非人道的で不道徳な存在であり、儒教・仏教・道教が説く、中国古来の伝統的な価値観とは相容れない思想だと指摘してします。さらに、中国の未来と変革において政治的ではなく道徳的なビジョンを提示し、現状を招いた責任は自らの行動や加担にあるという事実を、冷静かつ果敢に検証するよう促しています。

社説掲載の直後に、大紀元のウェブサイトに「中国共産党への関係を断ち切ります」という読者からの手紙が届くようになりました。大紀元はこれらの声明をhttp://tuidang.epochtimes.com/ にまとめ、一般の人々が閲覧できるようにしました。数か月で数百万部の『九評』が、メール、ファクス、郵送で中国本土に送られるようになりました。メッセージに感銘し(検閲のかかる本土のインターネットをくぐり抜けるソフトを利用して)数千人がすぐに大紀元のウェブサイトを訪れ、「共産党、共産主義青年団、少年先鋒隊との関係を断ち切ります」という声明が次々と投稿されました。1年も経たないうちに、数千人から数百万人へとその数は増加していったのです。

4億人以上が脱党宣言

2024年4月の現在、中国共産党組織からの離脱を宣言する4億2千8百万人以上の名前が、脱党サイトに掲示されています。宣言者は、農村に住む農民から著名な知識人、教師から退役軍人、人権弁護士から私服警官まで実にさまざまです。一部は実名を使用していますが、報復の危険があるため、ほとんどの人々は偽名で署名をしています。このため声明の一部で、独立した裏付けが困難な場合もありますが、脱党運動の規模、多様性、宣言者にとっての個人的・精神的な意義は、掲載されている声明文から明白に汲み取っていただけます。

声明には、共産主義下で経験してきた苦悩、腐敗への幻滅などが多く見られます。文化大革命時に犯した罪や、より最近の土地収奪や法輪功迫害など、自身が虐待を犯したことに許しを請う内容もあります。多くの声明文から、自己の良心に従い自由に生きられる喜び、安堵、爽快さが読み取れます。

脱党の目的は共産党の転覆ではない

『九評』は中国共産党を非難していますが、それに代わる政治体制を規定しているわけではありません。脱党運動は中国の政権交代への支持を暗示していますが、中国共産党の打倒やクーデターを主張しているわけではなく、具体的な制度改革も提示していません。中国共産党による暴力と二枚舌の文化を否定し、より公正で人道的な中国の未来を実現するための「徳」の復活に重点を置く脱党運動は、政治革命や制度改革ではなく、精神・倫理の復興と言えましょう。

法輪功との関係

脱党運動の始まりとなった「大紀元」は、主に法輪功学習者を中心に構成されており、脱党運動の多くの発案者も法輪功学習者ですが、脱党声明の公言者の中には、法輪功学習者は一握りしか存在しません。法輪功学習者たちが脱党運動を推進する目的は、政権交代の実現ではなく、中国共産党が犯してきた暴力の歴史を認識し、中国共産党とは関わらないという原則的な立ち位置を決める機会を中国人に提供することです。この過程で、道徳を基盤として、癒しや心の平和を人々が得る機会をもたらしていると、法輪功学習者はよく語っています。

迫害が始まった最初の数年間、法輪功学習者達は、中国共産党全体を迫害の加害者として捉えずに、迫害する個々のリーダーたちを指摘していました。しかし、中共による教育やメディアコントロールを通じて中国人の考えが形成されていったため、法輪功に起きている現実を多くの中国人が信じなくなっていることが明らかになってきました。法輪功が直面している虐待を人々に認識させるには、中共のマインドコントロールから人々を解放する必要があります。これが『九評』による分析の意図であり、実際、中国人へのインパクトは、大きいものでした。

「脱党運動」は、迫害の規模と本質を人々に認識させ、迫害に加担しないように距離を置くことを推進します。この過程で、人権侵害の抑制にも貢献しています。より多くの中国人が『九評』を通して中国共産党の暴力性、欺瞞性を知ることとなり、多くの国民が中国共産党に従って国民の権利を侵害する行為をやめることを誓っています。労働収容所の看守やその他の保安要員の多くが法輪功学習者を恣意的に拘束・拷問・脅迫する意志を失ったという話が個人的に語られています。その内の多くの要員は、上層部の命令による虐待から法輪功学習者を陰で守ろうとしています。法輪功は精神的な成就を目的とする修養法であり、団体として政治権力を求めたことはなく、今後も求めることはありません。

これほど重要な現象が知られていない理由

脱党運動は、欧米のジャーナリストや学者向けに設定されたものではなく、中国の反体制派による声明文や変革の呼びかけとは異なり、知名度の高い欧米の支持者はいません。民主・自由化の言葉で語られることもなく、目につく公的な抗議行動を引き起こすこともありません。中国の知的伝統に根ざした静かな運動であり、個々の人間が心の平穏と開放を見出すことを助けることがその目的です。将来、中国の統治機構がどのようなものになるにせよ、脱党運動は、何千万人もの中国人が日常生活で「誠実・公平・思いやり」を実践することで、より開放的で自由な社会を実現する基礎を築いています。