米国務省:『国際的な宗教の自由に関する報告書』で法輪功迫害を注視

国務省2021年度『国際宗教自由報告書』を発表するブリンケン国務長官(2022年6月2日)

国務省2021年度『国際宗教自由報告書』を発表するブリンケン国務長官(2022年6月2日)

米国務省は、2022年6月2日に2021年度『国際的な宗教の自由に関する報告書』を発表。事例を詳細に挙げながら、中国共産党(中共)の法輪功修煉者への迫害が現在も継続されており、23年目に入っていることを確定した。

「中華人民共和国は、中共の教義にそぐわないとする宗教を信仰する者への嫌がらせを続けている」と、アントニー・J・ブリンケン米国務長官は2022年6月2日の記者会見で述べた。具体的には、法輪功を修煉する中国人の「雇用や居住に対して障壁が設けられている」ことなどを挙げた。

1999年に中国政府により法輪功が禁止される以前は、中国政府は7000万人が法輪功を実践していたと推定。現在も内密で法輪功を続ける者の数は、法輪功の情報源では数千万人、フリーダム・ハウスは700万から2000万人と推定している。

今年の報告書の作成を担当したラシャド・フセイン 米国国務省 「国際的な宗教の自由」担当特使は次のように述べた。「信教の自由は、アメリカにとって極めて重要です。私たちの国は、宗教迫害から逃れた人々によって何世紀も前に設立されました。そのため、憲法修正第1条の権利章典をはじめ、合衆国建国の文書に宗教の自由が謳われているのは当然のことです。宗教の自由はまた『世界人権宣言』などいくつかの国際的な施策や協定に謳われている普遍的な権利です」

パンデミックにもかかわらず 継続する弾圧

中国の憲法は信教の自由を約束しているが、政権が統制する「通常の宗教活動」のみを保護しているに過ぎない。このため、中国のほとんどの宗教団体は、過酷な弾圧と国家が支持する嫌がらせの対象になっている。

「法輪功への信仰弾圧の結果、2021年の1年間で101人の法輪功学習者が死亡。2020年の記録は107人。明慧ネットと法輪大法情報センターは共に、5千人以上の修煉者が警察に逮捕され、9千人以上が嫌がらせを受けたことを報告している」と同報告書は記述。

同報告書は以下を指摘した。パンデミックが続いているにもかかわらず、信仰を理由に迫害される市民の数は以前から減少する兆しはない。中国共産党はパンデミックの期間、弾圧運動を強化し「邪教」のレッテルを貼った宗教団体を誹謗中傷するヘイト・プロパガンダを乱発した。

迫害は国境や拘留所の外にも及んでいる。法輪功修煉者を含む多くのグループが、「雇用、住宅、ビジネスチャンスでの深刻な社会的差別」を報告している。

広域で行われている拘束と拷問

1999年に法輪功への迫害が始まる前の法輪功修煉者の数は、約7000万人と中国政府が推定していた。「法輪功の動向やその他の組織を排斥するために、法規を超えた治安組織を中共が直接運営している」ことが、多数の情報筋から確認されている。

人権擁護のNGO団体・対話基金会の「政治犯データベース」によると、2021年9月30日現在、3793人が宗教的な信条を理由に投獄されている。そのうち、2751人は法輪功修煉者である。

明慧ネットの報告によると、警官はしばしば暴力を用いて法輪功修煉者を逮捕し、その後、拘留中に拷問するという。例えば、河南省安陽市の店主、李賢熙さんは、2021年5月11日、市場で法輪功の話をしたため逮捕された。李さんが拘置所で煉功すると、看守は李さんに手かせをかけて拷問した。

「6月13日、家族は、李賢熙さんが6月12日に死亡したと当局から知らされた。目撃者によると、彼は痩せこけ、頭は腫れ上がり、背中と膝にあざがあったという」と同報告書は記述する。

Bitter Winter誌によると、2021年4月12日、山東省 青島市の退役将校・公丕启(Gong Piqi)さんが監獄で死亡したことを家族が中国当局に告げられた。公さんは法輪功修煉者で、山東省予備役砲兵師団の副参謀長だった。当局は、彼の死因を「突発性脳出血」としているが、家族や友人は、身体に拷問の痕跡があったと報告している。

死亡した修煉者の遺体を遺族に引き渡すことを当局が拒否する場合が非常に多い。明慧ネットの報道によると、湖北省の胡漢角さんは法輪功を修煉した罪で4年の刑期を受け、獄中で死亡。2021年3月15日、法輪功について人に話したという理由で逮捕され、6月末に孝昌県裁判所は刑期4年を言い渡した。湖北省女性刑務所に移送されて13日後の11月9日、刑務所当局から夫に電話があり、死亡を告げられた。当局は遺体を家族に引き渡すことを拒否した。

系統的な人権濫用

法輪功への迫害は中国全土にわたる。明慧ネットは「警察が中国全土で法輪功修煉者を逮捕・嫌がらせしている」ことを伝えている。さらに、法輪功修煉者にとって重要な日、特に1999年に修煉者1万人が北京で平和的な陳情を行った4月25日と、法輪功が最初に伝え出された1992年 5月13日を記念する法輪大法デーの前後に、大量に修煉者が逮捕される傾向がある。

以下、報告書より。
「明慧ネットによると、中共100周年記念を前に導入された『安定維持』運動も嫌がらせの原動力だった。7月から8月にかけて、最も多くの修煉者が標的にされた省は、河北省、黒龍江省、山東省、吉林省、四川省、山西省、遼寧省。逮捕されたのは、教師、レストラン経営者、図書館員、建設労働者、工場労働者、学者、看護師、エンジニア、農業従事者、店主、多くの退職者。

多数の事例がある。例えば、2021年9月12日の明慧ネットは、さまざまな地域で、警官が嫌がらせをしたり修煉者を逮捕する事件を多数、報じている。そのうちの一人は、3月10日、法輪功の資料を配布したとして遼寧省撫順市の公安当局に逮捕された、楊小智さん。楊さんによると、拘置所は高圧スタンガンを使って電気ショックを加えた。もう一人は、吉林省吉林市の98歳の蔡秀芳さん。法輪功について人に伝えたとして、5月14日に逮捕された。 警察署の金属製の檻に数時間入れられ、警官に自宅を荒らされたが、保釈された」

修煉者は階層を問わず標的にされた。例えば、当局は7月20日、北京の元小学校教師である龔瑞平さんを逮捕。ハンガーストライキをしたが、強制給餌された。その3日後の7月23日に、湖南省の中学教師・李麗紅さんが法輪功について人に話したとして逮捕された。明慧ネットの報道によると、白馬橋派出所の署長である張傑は彼女を射殺すると脅した。

また、同報告書では以下を記述。「8月15日、河北省邯鄲市の王樹欽さんが私服警官に殴打された。法輪功についてこの私服警官に話したことが理由だ。明慧ネットは、王樹欽さんの肋骨2本が折れ、病院に運ばれたことを伝えている」

強制臓器摘出に関する最新情報

臓器収奪は、迫害の中でも最も悪質な犯罪である。「2021年6月14日、国連人権高等弁務官事務所は、宗教または信仰の自由に関する国連特別報告者アーメッド・シャヒード氏を含む国連特別報告者8名、人権専門家4名の独立した12人のグループによる声明を発表。『中国で拘束されている少数派 ー 法輪功学習者、ウイグル人、チベット人、イスラム教徒、キリスト教徒などが臓器収奪の対象となっているという報告に深く懸念する』」と報告書に記載。

同報告書は明慧ネットの情報を引用して、中国当局が法輪功学習者の意思に反してDNA、血液サンプル、その他の生体情報を収集したことを明示した。

“国家の敵”

中共は法輪功を迫害するために、自国の法制度を濫用してきた。以下、同報告書より。「4月20日付のラジオ・フリー・アジア(RFA)によると、陝西省榆林公安局が、2017年9月に拘束された人権弁護士・高智晟氏をまだ拘束していることを妻に伝えた。これまで、高氏の家族は彼の居場所も生きているかどうかも知らされていなかった。高氏は以前、キリスト教団体や法輪功修煉者、その他の少数民族の裁判を弁護していた」

中共は様々な宗教グループに「邪教」というレッテルを貼り、その信用を落とすためにヘイト・プロパガンダを広める運動を次々と展開した。以下、同報告書より。「Bitter Winterの報道によると、4月15日の国家安全教育日に、当局は邪教反対運動の一環として展示を開催。学生が中国全土にわたり「邪教」とラベル付けされた団体による違法な宗教活動との関係を断つという誓約書に署名した」。

このため、これらのグループは一般社会から差別されるようになった。以下同報告書より。「宗教的信条に基づき、現在及びこれからの賃貸における差別が続いていることが報告されている。2005年の公安行政処罰法における『疑わしい活動』に関する条項が本格的に施行され始めた2017年と2018年以降、法輪功修煉者は、自分たちにアパートを貸してくれる大家を見つけることに苦労している」

子供も迫害の対象から外されてはいない。以下同報告書より。「2021年11月の明慧ネットの記事によると、10月14日、9人の役人が李秀英さんの自宅に入り、法輪功を放棄する手紙に署名するよう命じた。李さんが法輪功を放棄しなければ、彼女の孫娘(中学生)は将来、大学への入学を拒否されると脅したが、李さんは応じなかった」

近年、米国政府は人権侵害者に対して制裁を加えた。例えば、ブリンケン国務長官と米国務省は2021年5月12日、四川省成都市「邪教問題予防処理指導小組弁公室」の元室長ユー・フイを、法輪功を迫害した罪で制裁すると発表した。

お願い

現在も続く迫害に対して、法輪大法情報センターでは、政府高官、学者、国際社会の皆様に下記をお願いしています。

  • 法輪功への迫害を公私にわたって声高に非難する。
  • 中国国外にいる迫害の被害者と会う。
  • 法輪功への弾圧運動において、中国の指導者がどこまで国際犯罪(人道に対する罪および/またはジェノサイドなど)を犯してきたかを評価する。
  •  法輪功学習者に対する深刻な人権侵害を積極的に行った中国の高官・役人に対して制裁を加える。
  • 迫害を非難する決議を採択し、臓器移植の濫用への国際的な加担を最小限に止める法律を制定する。
  • 法輪功コミュニティを国境を越えた弾圧から守るために行動を起こす。

この報告書に関する日本語の明慧ネットの記事はこちらへ。