CECC年次報告書、法輪功への迫害を強調

米国の「中国問題に関する連邦議会・行政府委員会(CECC)」は2022年3月31日、2021年版年次報告書を発表した。報告書には、法輪功学習者への迫害など、中国で進行中の人権侵害の詳細が記されている。

「CECCは過去20年間報告してきたが、現在の中国政府による恐るべき人権侵害と人間の尊厳を踏みにじっている事実を鑑みて、中国における人権・法の支配への侵害を記録することはこれまで以上に重要」と、CECCのマークリー委員長は語る。

334ページの報告書では、「宗教の自由」「刑事司法」の項目で法輪功への迫害を論じられ、「特に懸念される事例」の項目で個々の拘束のケースを紹介している。

宗教の自由

報告書によると、過去と変わらず、中国当局は法輪功学習者の拘束を続け、2021年には少なくとも622人の学習者が判決を受けた。また、Minghui.orgを引用し、中国当局は引き続き学習者を拷問・虐待し続けており、数年に及ぶ虐待もあり、2020年と2021年だけで少なくとも数十人の学習者が虐待から直接・間接的に死亡。

報告書は、生体臓器収奪についても取り上げている。「2021年6月、12人の国連人権専門家グループは、中国における臓器収奪の信頼できる数々の報告で、『特定の民族、言語、宗教の少数派が、しばしば逮捕理由や逮捕状なしで様々な場所で拘束されている』と見受けられ、『極めて警戒』し『深く懸念』していると述べている。国連グループは標的とされている集団として、少数民族、法輪功学習者、ウイグル人、チベット人、イスラム教徒、キリスト教徒を挙げている」と記述。

刑事司法

「刑事司法」の項目では、中国当局が法の適用しない収容所に法輪功学習者を恣意的に拘束していることを指摘。「その存在と用途に法的根拠がなく、そのような場所に拘束された人々(多くは陳情者と法輪功学習者)は、いつ釈放されるかわからず、いかなる手続き上の保護もない」と記載されている。

恣意的な拘束は、国際人権法にも「人の自由を不法に奪ったり制限したりすることを禁止する」中国の憲法にも違反すると報告書は指摘する。

また、法輪功学習者などを拘束するために、不明確に定義された法律が法制度を通じて施行されてきたことを紹介。「中国当局は、刑事法を利用して普遍的な人権を抑圧し続けてきた」学習者はしばしば 「法律を弱体化させるために教団を組織し利用した」罪で起訴されている。報告書は、弁護士が被疑者の弁護をする過程で、中国政府のカルト指定に異議を唱えることが禁止されていると指摘している。

特に懸念される事例

「報告書の要旨」に、特に懸念される事例のリストが掲載されている。法輪功学習者でカナダ国籍の孫茜さんの事例もその一つ。

2017年に法輪功を理由に北京で逮捕された孫茜さん。カナダの市民権を持つ中国で数十億ドル規模の事業を行う生化学企業の副社長。

報告書は、彼女のケースについて次のように説明している。「2017年2月、カナダ国籍で医療技術会社の幹部であり、法輪功学習者の孫茜さんの北京の自宅に警察が襲撃し、身柄を拘束した。この家宅捜索で、警察は法輪功の資料を押収した。2018年9月の裁判を経て、朝陽区人民裁判所は2020年6月30日、法輪功を修めていることで彼女に8年の禁固刑を宣告した。

当局は、孫茜さんが希望する弁護士がこの事件から手を引くよう圧力をかけた。また、孫茜さんに長時間手錠をかけ、唐辛子スプレーをかけるなどの虐待を行った。判決を出すにあたって、孫茜さんは脅迫されてカナダ国籍を放棄したと言われている。

勧告

「報告書の要旨」では、中国共産党の人権侵害を抑制するために、米国議会と米政権に対して一連の勧告が挙げられている。その中には、強制労働による製造品の輸入停止、迫害の被害者の支援、デジタル管理への取り組みなどが含まれている。

同委員会はまた、人権侵害者の責務を問う「グローバル・マグニツキー法」を利用して、甚だしい人権侵害に関与した中国当局者に制裁を加えることを提言。2021年5月、アントニー・ブリンケン国務長官は同法の下で、中国共産党610弁公室の元主任の余輝とその直系家族の米国入国を事実上禁止した。余輝への制裁は、法輪功の迫害に関わる加害者への今後の制裁の前例となる。

「中国政府による人権侵害を記録することは、委員会の責務だけでなく、抑圧や検閲のために発言できない人々への道徳的義務だ。CECCの勧告を実行に移すために、同僚たちと引き続き協力していく」とジェームズ・マクガバンCECC共同議長は述べた。