「看守に採血されました」―中国の拘置所での悪夢を振り返る法輪功修煉者

オーストラリアでの平穏な抗議活動で、中国での法輪功への迫害について通行人に語りかけるエンジェルさん。

オーストラリアでの平穏な抗議活動で、中国での法輪功への迫害について通行人に語りかけるエンジェルさん。

この素敵な女性が拷問され、殺されそうになったとは、信じられません。市民のために働き市民を守るべきはずの警官の手によるものでした。拘束中に強制的に採血もされています。国家が承認する強制臓器摘出が行われている国で採血されていたので、彼女が生きているだけでも驚くべきことです。

法輪功修煉者で、かつて良心の囚人だったエンジェルさんを紹介します。

彼女は中国共産党(中共)の闇に包まれた血なまぐさい迫害を暴露することに、日々努めています。

法輪功とは?

法輪功(法輪大法)は、心身の修煉法で、1990年代に中国で莫大な人気を博しました。5つの穏やかな煉功と、道徳、身体、宇宙を基盤とする仏家の教えから構成されます。

「法輪功の治癒効果のおかげで、多くの人々が健康を改善し、強い身体になりました。人々は自然と他の人にも伝えたいと思い、わずか数年で数億人が法輪功を修めるようになりました。」とエンジェルさんは説明してくれました。

エンジェルさんが初めて法輪功に出会ったのは1998年のことでした。彼女は他の多くの人と同じように、健康改善を願って法輪功を始めました。

「法輪功に出逢う前は、人生の困難や挫折とどう付き合っていけばいいのかわかりませんでした。うつ病につながっていきました。自分の感情をコントロールできず、途方に暮れていました。

常に不整脈を患い、階段を上るだけで、動悸が激しくなり、体力がなく、汗ばんでいました。怒りっぽくなり、些細なことで落ち着きを失っていました。さらに、肝臓疾患が現れ、激しい痛みに悩まされました。肉体的な苦痛よりも精神的な苦痛の方が辛く、当時28歳だった私は、40歳までは生きられないと思っていました」

現在、エンジェルさんは49歳。彼女の健康は劇的に改善されただけでなく、文字通り病気が消えたそうです。また、「法輪功を修めてから、明るく、楽観的で、幸せな人間になりました」と語ってくれました。

中国の江沢民・元党首は、法輪功の人気が急速に高まったため、この成長ぶりを全体主義政権への脅威とみなし、1999年に残忍な迫害を開始しました。法輪功の撲滅が迫害の唯一の目的でした。

約7000万人から1億人の法輪功修煉者だけでなく家族も、突然、中共が自分たちを敵に回すという現実に直面しました。天安門事件で1万人の罪のない人々を大量に殺害した中共が敵となったのです。

中共政権はまず、テレビニュース、ラジオ、新聞、インターネットなどの国営メディアを利用して、24時間体制で法輪功を中傷するプロパガンダを全国に氾濫させ、世論を法輪功に敵対させるために、温厚な修煉を悪魔のように報道し続けました。

そして逮捕・ 拷問・殺害 ・ジェノサイドが始まります。

修煉しているところを発見されたら逮捕されます。中国全土で、近所や職場で法輪功修煉者がいたら通報するように徹底され、場合によっては金銭的な報酬も提供されました。警官は修煉者を捕まえると、ボーナスが支給されました。

公園で誰にも迷惑をかけずに穏やかに煉功できていたのに、突然、瞑想することで「国家の敵」になってしまった。……何か誤解があったのではないか? 中南海の陳情局に状況を説明することは、助けになるのでは?

法輪功のために陳情しようとした人は、どれほど穏やかに行っても逮捕されてしまうことに、当時のエンジェルさんは気づきませんでした。

2000年、エンジェルさんは4人の修煉者と一緒に北京行きの列車に乗り込み、天安門広場に向かいました。

「自由に穏やかに煉功する権利を訴えに行きました。座って10秒も経たないうちに、不法に連行されました」とエンジェルさんは語ります。

「天安門広場の至るところに警察官と私服警官がいました」。

エンジェルさんは警察署に連行され、尋問を受けました。尋問した警官は、身元を明かさせるために、ライターで彼女の手を焼き始めました。しかし、エンジェルさんは、ただ痛みに耐え、何も言いませんでした。

エンジェルさんに同行していた修煉者の一人は、肉体的な拷問に耐えられず、不本意ながら全員の詳細を漏らしてしまいました。

エンジェルさんは自分の街に送り返され、職場に4日間拘束されました。家に帰ることは許されませんでした。警備員が24時間彼女を監視しました。幸いなことに、彼女は最終的に釈放されましたが、迫害から解放されたわけではありませんでした。

中国の天安門広場で打坐するエンジェルさん(2001年)

洗脳センター

2001年、警官が職場に押し入り、エンジェルさんは違法に連行されたのです。

「『再教育施設』(洗脳センター)に送り込まれました。彼らは私を『転向』させようとしました。私は木くずではありません。自分の考えを持っています」とエンジェルさんは語ります。

エンジェルさんは、どんな心理的圧力にも揺らぐことなく、毅然とした態度で、信念を棄却しないことを主張しました。

洗脳センターでは、看守が修煉者に毎日、一日中、中共のプロパガンダを見るように強要します。法輪功を誹謗中傷し、共産党を賛美するものです。音量は非常に大きく、修煉者は看守に定期的に自分の考えを書くことを強要されます。「進歩」状況を把握するためです。考えがプロパガンダにそぐわないと罰せられます。

エンジェルさんは協力せず、迫害に抗議するためにハンガーストライキに入り、さらに虐待されることとなりました。

「数名の人が私を押さえつけました。管を引き抜いたとき、管は血まみれでした。思い出したくありません」ゴム管から強制摂食をされた時の、痛ましい体験を語ってくれました。

管を用いての摂食は、通常、救命治療に用いられます。しかし、中共は、拘置所、強制労働所、刑務所でハンガーストライキをしている法輪功修煉者をさらに迫害するために用います。さらに、液体にはよく薬物が混ぜられ、被害者は意識不明になります。強制摂食は、無数の法輪功修煉者の死因です。

エンジェルさんは洗脳センターで体調が悪化し、血圧が低下し、危険な状態に陥りました。

「私の家族は、私を無条件で釈放するという手紙を受け取りました。」エンジェルさんの家族が迎えに来て、家に連れ戻されました。

オーストラリアでメディア・インタビューを受けるエンジェルさん。

「看守に採血されました」

法輪功を煉功し、エンジェルさんは健康を取り戻しました。しかし、中国にいる限り、自由は拘束されています。

エンジェルさんは2004年に再び逮捕され、拘留されました。彼女の罪は?中国で法輪功修煉者が対象となっている迫害についての情報を配布したからです。

中国共産党が狂ったように法輪功修煉者を迫害している間、中共政権は中国の13億の人口から詳細を隠蔽するために全力を尽くしています。

人権侵害に対する意識を高める自発的な行動は、崇高な行為とみなされるべきですが、中国では、政権に対して発言することで収監されます。あまりにも多くの命が犠牲にされました。

エンジェルさんは、さらに恐ろしい拷問を受けました。

3度目の拘留について、こう語ってくれました。

「数人に抑えられ、強制摂食されました。減刑してもらうために、囚人は警察と協力し、暴虐に拷問しました。全体重で私を押し付け、私の胸に全力で飛びかかってきました。私の頭を強引に掴む者や髪を引っ張る者の中で強制摂食されました。濃度の高い塩水を注入され、ひどく喉が乾きました。舌が砂のように乾き、胃が焼け付くようでした。何を流し込まれたか わかりません」

エンジェルさんは、拘置所で奇妙な体験をしている。

「投獄されていた時、看守に採血されました。当時は理解出来ませんでした。あの大部屋の20人のうち、なぜ私だけ採血されたのでしょうか?なぜ他の人は採血されなかったのでしょうか?」

エンジェルさんはその部屋で唯一の法輪功修煉者でした。

看守は毎日エンジェルさんを拷問し虐待していたので、彼女の健康を懸念しての採血ではない。

「2006年にようやく真実が明らかになりました。中国共産党は臓器売買のために法輪功修煉者を殺害しています。その時ようやく気付きました。中国共産党が “悪魔の所業” に手を染めていることを。無実の人をオンデマンドで殺害しています」

拘置所で強制摂食され、虐待されて1ヶ月以上経ったあと、エンジェルさんは歩くこともできず、全く自立できない状態でした。どこに行くにも人に運んでもらわなければなりません。この状況にも関わらず、強制労働所で輸出製品を作らせられました。

エンジェルさんの拷問による傷害があまりにもひどかったので、強制労働所の医務室に連れて行かれました。

「医療スタッフが私の健康状態を診断し、『内分泌系が破壊されている。いつ死んでもおかしくないから、治療は無駄だ』と受け入れを拒否しました」

警官は強制労働所まで運転しましたが、彼女をそこに放置するわけにもいかず、拘置所に連れ戻すわけにもいきませんでした。

警察は、エンジェルさんの家族に迎えに来るように通知しました。

エンジェルさんの年老いた母にとって、パトカーの中で動かずにただ横たわっている娘の姿は、あまりにも酷いものでした。

「私であると母が認識できないほど迫害されていたのです。年老いた母は私の名前を叫んで泣いていました。警官は母に言いました。「彼女を引き渡す。まだ生きている」と。

「人の優しさに触れることは最も美しいこと」

エンジェルさんは、法輪功の煉功を通して健康を取り戻しましたが、家に戻っても安全とは言えませんでした。

「中共の恐怖政権のもとで、安全に生活できる保証はありません。危険を感じ、どうしようもなく、中国を逃れてオーストラリアに向かいました。美しい自由な国です。」

幸いにも、エンジェルさんのパスポートは中共が取り消したり没収したりすることがなかったため、2015年に海外に渡ることが可能だったのです。

家族は海を隔てた向こうにおり、これまで馴染み深かったものからも離れて、エンジェルさんは今、オーストラリアのメルボルンに適応するために、学んでいるところです。

エンジェルさんは清掃員の仕事で生計を立てています。時間の許す限り、メルボルンの中国領事館の正面玄関の前で「法輪功迫害を止めよう」と書かれた大きな白い横断幕を静かに支えています。ここでは法輪功修煉者をよくみかけます。時折、通りがかりのオートバイの運転手たちがクラクションを鳴らし、応援してくれます。

他の日には、エンジェルさんはオーストラリア政府に送る請願書の署名を集めています。法輪功への迫害を直ちに終わらせることを求めるものです。これまでに、彼女は一人で約4万人の署名を集めました。英語が少ししか話せないエンジェルさんが、かなりの努力をしたことが窺えます。時折、バイリンガルの修煉者が、彼女の通訳としてサポートしています。

「外で署名を集めていると、『私の署名が本当に役立つのでしょうか?』と尋ねられることがあります。『もちろんです。海が無数の水滴から成るように、署名することで正義を支持し、”善” を選択したことになります。より多くの人がこの迫害を知ることで、迫害できなくなる可能性が高まります。あなたは命を救っています』と答えています」

何年も前から、エンジェルさんは、迫害への認識を高めるために、どんな天気でも粘り強く努力してきました。

「中国での恐ろしい真実を人々に認識してもらうという自分の役割をしっかりと果たしていれば、人々は進んで署名してくれます。私にとって…希望です。人の優しさに触れることは最も美しいことです。私たちの資料を読み、迫害について学んでいる姿を目にすると、希望が湧いてきます」

家でのエンジェルさんは、色とりどりの蓮の花を作っています。お守りのようなものです。署名に立ち寄ってくれた親切な人々に喜んで渡しています。窓のない小さな部屋には、この可憐な手作りの花があふれています。ランプ、ドアノブ、取っ手、フックなど至る所に掛けられています。それぞれの花につけられたラベルには、法輪功の理念である「真、善、忍」の文字が書かれています。

エンジェルさんと話すと、とてつもなく楽観的だと感じます。また、自分のすることに決意を持って取り組んでいます。そして、常に他の人を思いやる素晴らしい人です。自分の健康と前向きな価値観は、精神修養がもたらしたものだと語ります。

「法輪功は心を満たしてくれます。他にない美しい感覚です。すべてに対して平穏でいられます」

あの迫害の体験を経ても、このように穏やかなエンジェルさん。彼女の内面が映し出されていることは確かです。私たちが学びとれる何かをエンジェルさんは秘めています。


中国の臓器移植センターの数は、1999年からわずか8年間で3倍増となりました。中国にはまともに機能している臓器提供システムはありません。1999年は、中国政権が法輪功修煉者を迫害し始めた年であり、何十万人も強制労働所に送り込まれました。多くは二度と姿を見ることはありませんでした。